取材レポート

「デンマークでの嬉しい子育て」
“純米子育て”

家族写真


今回取材に応じてくれたのは、竹内直(なお)さん31歳です。
彼女は出生率が現在1.9と高い北欧5か国のひとつであるデンマークの首都、コペンハーゲンに在住し、同国人で、同年齢のA2SEA(洋上風力設置・サービスソリューション会社)で二等航海士である夫のカール氏と、3歳になる海(カイ)君と共に、大学院の獣医学マスターコースで学びながら、楽しく、そして“幸福な子育て生活”を送っています。


家族写真とデンマークの地図


“純米子育て”

3年前、生まれたてのカイ君も加わって、家族3人がそろった姿に、日本橋にある直さんの両親宅で接し、親戚ではあるが、ある種の外部者でもある私を含む同席の人達に、特別に飾ったりするわけではなく、感情をごく自然に現わしつつ接するその姿を見て、「これは味付けなしの“純米子育て”だ!」と直感しました。

彼ら一家の成り立ちと行動が、自らの素質に加えて、北欧デンマークの進んだ子育て支援体制と、健全な社会生活環境のおかげもあって、躊躇や戸惑いもなく、とても良い影響を受けていると感じました。

今回の取材が、読者や多くのみなさん方に、日本の社会が目指すべき“純米子育て”の具体的方策を探り出すヒントになってくれればと考えました。

ちなみに、彼女は取材者である私の従妹の長女です。
選ばれた特別な人ではなく、偶然に取り上げる彼女のような“普通のひと”の「生活ぶり」と、「子育て」の実態例が、一般的になるような社会が日本でも生まれればと希望します。

 

[デンマークでの嬉しい子育て」-----「直さんとの一問一答集」

これから、インターネット経由で、彼女との一問一答の取材に入ります。

*そして読者の皆さんに参考になればと、取材者である私の《注釈》を必要に応じて差し入れました。


《質問-1》 「[デンマークでの嬉しい子育て]という今回の主題の命名に異存はありませんか。」
[お答え] 「はい、ありません。」「良いと思います。」
《質問-2》 「カイ君の誕生でうれしかったことと、苦労したこと、さらにはこれを助ける環境がいかに素晴らしいと感じているかを教えてくれませんか。」
[お答え] 「カイがうまれて、夫カールの家族との絆が、またより強くなったように思います。」
「カールが仕事のために居ないことが多いので、家事やカイの面倒をよく義母や義姉妹にお願いしています。」

家族写真

《カールさんを含む、祖母や叔母さんたち家族を囲んだ写真》


「私が大学にいける時間が限られてしまうので、夜間、カイの就寝後に勉強をしたりせねばなりません。」

「デンマークでは、どの子も保育園に行けますが、開園時間がたいてい午前7時から午後5時くらいに限られているので、“仕事を夜にして間に合わせている” と、近所の方も言っていました。」

「なんといっても嬉しいのは、出産医療費がまったくかからないこと!」

「カイが生まれる時、私は無職で、カールもまだ学生でしたから、日本にいたとしたなら無理な話です。」
《質問-3》 「保育所の利用はカイ君が生後いつごろから始まり、他家のお子さんの場合にも、保育所利用の条件が一般的にどうなっているかを教えてください。」
[お答え] 「保育所は地方自治体の管轄です。まれに私立というのもありますが、普通子どもが6か月以上でないと入れません。」

「これは母乳を最低6か月あげたほうがいいという、健康上の配慮でもあると思います。」

「利用する場合、自治体に申し込み、待ちリストに載せます。」

「カイは10か月から保育士さんのところに行き始めました。」

「デンマークでは3歳以下の場合、個人の保育士さんに預ける方法と、保育園に預けるかの二つのパターンから選べます 。」

「コペンハーゲンに引っ越した際、しばらく保育園に行った後、3歳から日本の幼稚園に当たる幼児保育園に行っています。 」

(注―1)デンマークの保育制度を概説すると、
・保育は、自治体の責任です。(民間保育施設は極めて少数)
・乳児保育は0~2歳
・幼児保育は3~5歳
・学童保育は6~9歳、が対象です

[直さんの、より詳しいお答え]


Børnehave(“バーナハオ”)は幼稚園となるのですが、
Vuggestueは3歳未満の保育所(もうご存じの通り、乳児保育)、

Børnehaveは3歳~5歳、または6歳までの幼児保育のことをさします。

3歳未満では保育士さんに預ける方法もあるのですが、これは保育士さんの家で子ども3~4人での保育になるので、Vuggestueとは異なります。

カイの場合、10か月から1歳10か月まで保育士さんの家にあずけ、その後コペンハーゲンに引越後、1歳11か月から3歳までVuggestueに通い(2歳5か月までの約6か月は少し離れたVuggestue)、その後は今通っているところに移りました。

3歳からBørnehave に通っています。今通っているところは、VuggestueとBørnehaveが一貫している園なので、3歳から自動的にBørnehaveの組に入れたわけです。(分かりにくいですか???)

《質問-4》 「保育所通園の費用と、入園条件も知りたいです。」
[お答え] 「公立ですし、入園条件はありません。」

「ただ、私達はコペンハーゲンに引越ししてきた時、一番近くの保育園はいっぱいで、すぐには入れませんでした。」

「少し離れた(自転車に乗って15分ほどで行ける)空きのある保育園に、はじめは連れて行き、今の園の空きがでるのを6か月ほど待ちました。」

「私の住んでいる自治体での費用は、3歳未満だと月6万円ほどで、3-6歳の保育園だと3万7千円くらいで、子ども手当てが国から月2万円程度出ています。」

(注―2)公共保育園の利用料――自治体が事情に合わせて決定。
但し、保護者の支払いは、その運営費の35%を上限とする。

「低所得者またはひとり親は補助が出るので費用が減ります。」

「カイの通っている幼児保育園は “運動を通じての教育” をモットーにしていて、毎日バスで森のある敷地に行っています。」

「場所の限られているコペンハーゲンでは、こうした“森の保育園”が少なくありません。」

(注―3)森の保育園の効用:
「自然と共に遊ぶことは、子どもたちの創造力や集中力を育て、遊びを通じて自分の限界を知ることに役立ちます。」

《質問-5》 「保育所の休みあるいは閉館時に、もし直さんが風邪や病気にかかったら、夫君カールさんがお仕事で留守の場合は、彼のご両親や親せきの人、あるいはご近所のおばさん達やその他の人達はどのようにお世話してくれますか。」
[お答え] 「義理の妹がコペンハーゲンに住んでいるので、まずは彼女にお願いすることになると思います。」

「義理の姉も今産休中なので、お願いできると思います。」

「義理の母は遠くに住んでいるので、緊急の場合はお願いできませんが、週末など私が忙しいときはカイの面倒をお願いできます。」

「カールの家族は仲がいいので、お願いしやすいです。」

「あとは、カイの幼稚園で知り合ったお母さん方にお願いすることになるでしょう・・・。」

「個人的にナニーを雇っている人も多くいるみたいです。」

(注―4):デンマークでは、現在の日本と大きく違って、社会組織、いわゆる “コミュニティ”が確立しています。
近所の親同士が互いに苦労を分け合い、近所の住民の積極的な手助けもあると言われています。
これは戦前の日本社会が持っていた、近所同士の親密な関係維持と助け合いの精神を彷彿とさせます。
できれば、現代日本社会はこれを見習って、単に国の支援体制の強化を望むだけではなく、明るく親密な社会の再建に、子育ての苦労を通じて皆さんで尽くすようになればと、期待しています。

《質問-6A》 「 “ナニー”とは、どんな人ですか?日本でいうシッターのことでしょうか?あるいはデンマークの制度で言う保育ママのことですか?」
[お答え] 「はい、そうですね、ベビーシッターの方が適切な日本語ですね・・・。」
《質問-6B 》 「そして、その場合の費用やその他は、国が持つのですか、それとも奉仕サービスなのでしょうか」
[お答え] 「個人的にナニーを雇うとなると、費用がかかります。国からの補助はないと思います。」

「今、もう少し詳しく調べたところ、保育所に預ける代わりに個人的にベビーシッターをやとった場合や、私立の保育所に預ける場合でも、国から補助が出るそうで、あまり公立と変わらないくらいの費用で行かせることができるみたいです。」
特別質問 「保育ママの制度も限定的にはあると聞きますが、本当でしょうか?」
「もしそんな情報が誤りでしたら、お答えは結構です。」
[お答え] 「保育ママの制度というのが、3歳未満の乳児保育を個人の家でやられているものを指します。上に書いたように、3-4人程度に1人の保育ママとなります。」

「保育ママも市が管理と経営をしているので、頻繁に保育ママ同士が集まっては何かの活動をしたり、休みのときは他の保育ママのところに預けたりできるようなシステムになっています。」
《質問-7》 「保育所の利用条件が極めて子育て家族に有利にできていると聞き及びますが、具体的にはどのようですか?」
[お答え] 「まれに(金銭的理由でなく自主的に)自分の子どもを家で面倒を見ている、という人もいますが、ほとんどの子どもが保育所などに行っています。」

「社会性を育てるという意味もあるのだと思いますが、(一人親、失業手当など)何かしらの社会保障があるので、 “お金が無くて行けない” という状況は、ほとんど無いのだと思います。
《質問-8》 「デンマークの男の人たちの家事への携わり(日本ではイクメンと呼ばれている)は、日本とどう違いますか。」
[お答え] 「子育てに関して言えば、男性は女性と同様に関わるのが当たり前です。」

「子どもの送り迎えも交互にしている人が多いようですし、保護者会などでも男性女性と半々です。」
「母親の産休が終わった後、父親が産休をとる、ということもしばしば聞きます。」
「私が思うところ、日本と比べて仕事の融通がつきやすいのだと思います。」
「週37時間労働で、年に5週間の休暇が取れるなど、仕事と家庭のバランスをとるのが当たり前、という感覚があるようです。」

(注―5):日本生命保険社の新事態


“男が変わった” 、“男親の育休 100%が目標”


日本生命は、最近“男親の育休100%目標” を掲げて進み始めたと、日本経済新聞 の5月17日朝刊の特集で報道されました。

育休を取得した(日本生命、30代・法務部門)の男性は、「計画的に業務を進め、組織内で連携が取れれば休めると分かった。」(日本生命、30代・商品開発部門)男性は、「効率的に働き、早く帰ることを意識するようにった。」 等の感想があった。

厚生労働省の調査では、2012年度の育休取得率は、女性83.6%に対して男性は1.89%です。

政府も力を入れる。
政府は、2020年までに男性の育休取得率を13%にする目標をかかげている。
「育児休業給付」 は 「子どもが1歳になるまで育休前の賃金の5割を保証してきたが、育休の当初半年間だけ3分の2にまで引き上げる。」
「妻と夫がそれぞれ半年間育休をとれば、夫妻で1年間それぞれの賃金所得の3分の2が受け取れる。」
「“収入が減る” と、消極的だった男性の育休取得を後押しする。」

日本社会での育休取得の “最大の壁” は職場環境
――男性が育休を取らなかった理由
   経済的理由        ――22%
   取りにくい職場の雰囲気――30.3%

有名評論家の日本生命への評価
「大半の企業は、まだ男性の育休取得に否定的。会社の号令で意識が変えられた日本生命の決断は大きい。」

《結論》:国による仕組み作りと共に、それだけに依存するのではなく、各職場が “意識改革” を進めることこそが、男性の育休取得を増やすカギになる。

《質問-9》 「このように日本より素晴らしい環境が、いつ頃から、どのような経緯を辿って整備されたのでしょう」
   「以前に抱えていた問題はどのようなもので、国の子育て環境整備の政治的進歩、あるいは進化の歴史を簡単に教えていただければ嬉しいのですが。」
[お答え] 「夫に、仕事に出て家事もするのは無理だといわれた」という古い女性のインタビューを聞いたことがありますので、もちろん今のような環境はデンマークでもずっと以前からあったわけではありません。」

「デンマークは、女性の選挙権獲得が1915年と早いですし、1970年にはレッドソックス運動という女性の平等運動があり、所得の差の改善などがされました。」
「ですが、いまだにデンマークは他の北欧諸国に比べて男女の所得差が大きく、重役職の女性が少ないそうです。」
《質問-10》 「カイ君が保育所から小学校へ、そして中学、高校、大学を卒業するまでの学費を含む総費用はいくらほどで、その負担は、両親の収入などの生活力と関係して変わってくるので しょうか?」
   (日本の場合はそのトータル費用が、およそ3,000万円と高額で、子どもを多く持つことから逃避して、それが少子化の原因になっているとのことですが。)
[お答え] 「デンマークでは、基本的に学費はありません。」

「18歳以上で勉強をする場合、国から補助金がでます。」
「それは、実家から通っているか、一人暮らしをしているか、子どもがいるか、などによって変わりますが、私は現在、修士課程に就学中で10万円弱もらっています。これが最高金額だと思います。」
「もちろん、私はカールが仕事をしているからこそ勉強をしていられるのですが、二人とも学生でありながら子どもを生んでいる人はたくさんいます。」
《質問-11》 「カイ君はすぐ保育所通いができたそうですが、保育所及び保育士の数は十分足りているでしょうか?(保育体制の整備状況)」
 
「日本では、保育士資格を持つ者は多いのですが、給与など働く条件が厳しく、保育士募集に応じないケースが多く、保育士が足りない悩みに直面しています。」
「その主な理由は、保育士の低い給与です。」
「民間保育所勤務の保育士は、公立の保育所勤務の場合と比べて大幅に低給で、同様に看護師等国家試験取得資格者などと比べても、月給が10万円以上低く、独自の子育て生活力が約束されません。」
[お答え] 「前に述べたように、近くの保育園にすぐ入れなかったのは、そこの人気が高かったからだと思います。」

「保育士が足りないということは聞いたことがありません。保育士の収入は、もちろんそれほど多くはありませんが・・・。」
「カールの母親が幼稚園長なので聞いてみたところ、保育士の仕事がデンマークでは逆に足りないそうで、もし日本で保育士が足りないのを知っていたら、日本で仕事をしたいと思うデンマーク人の保育士も出てくるのではないか、と言っていました・・・!」 (ちなみに、こちらでは男性の保育士も結構います。)
《質問-12-A》 「デンマークでは公立と私立の保育園で、保育士の給与の差はありますか?」
[お答え] 「幼稚園長であるカールの母からの情報をお伝えします。」

「保育士の給料は、私立と公立で差はありません。同じです。」

「私立の園は、公立ではないと言っても、自治体から補助金が出るので、親の費用は少し増える程度で通園させることができるそうです。」

「ではなぜ私立の園に行かせるかというと、親の具体的な意見や要望などその影響を強く反映させることができるからだそうです。」

「その一例として、運営時間が長い(24時間営業の)私立の園もあるそうです。」
《質問-12-B》 「ご存じなら、保育士の待遇は、同じく国家試験取得資格者である看護師と比べた場合、どの程度の差がありますか?もしこれに対する回答がもらえれば、大変参考になります。」
[お答え] 「保育士の平均給与は46万円ほど、看護師の平均は50万円ほどで、それほど変わらないのではないでしょうか。」
(どちらのお仕事も、いわゆる “高給取り” ではありませんが、ごく普通の給料で働くレベルのお仕事と言えるのではないでしょうか。)
 

《特注――α》直さんNao Takeuchi-Storm一家 の経歴と家族構成

――「純米家族の純米子育て」の背景を探る  


(第1問) 「あなたは西暦何年にオーストラリアに留学され、獣医の学位は何年に取得しましたか?」
(お答え) 「1999年(高校1年生)に初めてAFS留学生として交換留学をしました。」
「帰国して高校を卒業後、メルボルンに戻り(2002年)、獣医学位を2009年に取得しました。」
(第2問) 「留学と専攻の決心はどのようにされましたか」
(お答え) 「海外への憧れが小さいころからあり、交換留学をしました。」

「幼いころから動物が好きで、動物にかかわる仕事をしたいと思っていたところ、オーストラリアで出会った獣医師に獣医学を薦められました。」

「海外で仕事をしたいと思っていましたし、憧れの野生動物にかかわる仕事がオーストラリアではできるのではと期待して、両親に頼んで留学しました。」
(第3問) 「卒業には何年を要し、いかに苦労し、そしてエンジョイしましたか?」
(お答え) 「日本の高校卒業資格だけでは、直接オーストラリアの大学には受け入れてもらえないので、1年間ブリッジングコース(大学補習校)に通ってから獣医学部に入学しました。」

「そのため、5年の学位取得のところを6年かかりました。でも、補習校ではアカデミック英語の他、科学的な論文の書き方や西洋的論理を基礎から学ぶことができ、とても役立つ知識を獲得したと思っています。」

「メルボルン大学の獣医学部は実践を重視しているので、卒業までにたくさんの臨床経験を積まなければならず、あちこちの獣医病院にいかなくてはなりませんでした。」

「あまり大型動物との経験がなかったので、牛や馬の臨床は苦手でした。」

「学ぶことが多く、勉強はもちろん大変でしたが、よい仲間たちに出会えて、お互い支え合いながら(ハウスメートなど)学生生活をしていました。」
(第4問) 「デンマーク人で二等航海士の夫君、カール氏と結婚に至る経緯と、結婚の決断理由をそっと教えてくれませんか」
(お答え) 「カールも1999年AFS留学生として、デンマークからオーストラリアに来ていたので、そのとき知り合いました。お互い16歳でした。」

「帰国後は連絡は途絶えていましたが、2004/5年の冬に私がヨーロッパに一人旅に行き、デンマークによった時、カールを訪ねました。」

「二人とも学生でしたので、お付き合いは続けられず、メールなどで数年間やり取りをしていました。」

「2008年8月、私が日本に帰国したとき、カールも日本に来てくれて、婚約しました。」

「カールはまだ学生だったので、私がデンマークに引っ越すことにしました。」

「結婚の理由は・・・、何でしょう。結婚しなくても良い時代ですが、けじめをつけたかったのですかね?」
 

デンマークの子育て環境  ~出産・育児サポートと乳幼児保育~


1.出産・育児への対応
  (1)出産前後の休暇
      ・産前・・・4週間
      ・産後・・・14週間
  (2)出産費用の無料化
      ・妊娠時の検診から出産後のケアまで
  (3)両親のための育児休暇
      ・32週間の両親育児休暇
       ※子どもが9歳になるまでに

2.就学前保育のスタイル
  (1)低年齢児のための
      ・保育園(ゆりかごの間―Vuggestue)
      ・保育ママ
  (2)幼児のための
      ・キンダーガルデン(Børnehave)
       ※育児支援も含む
  (3)小学生のための
      ・0学年クラス
      ・学童保育(早朝と午後)
3.出生率および女性の就業率
  (1)出生率の向上


<合計特殊出生率の推移:日本とデンマークの比較>



  (2)女性の就業率の高さ
      ・女性・・・74.4%
      ・男性・・・79.2%
       ※2009年 16歳から64歳まで

*直さんとのインターネットでの質疑を通じて、デンマークの保育環境を説明してきましたが、話題が多岐にわたったきらいがあります。読者の皆様のご理解を深める狙いを以って、デンマークの事情をまとめたこの稿を用意いたしました。さらなるご理解に役立ちましたら幸甚です。*

荘司

 

今回の[取材後記]


取材企画の意義

今まで数年間という長期にわたり、日本を代表する企業並びに日野市の保育園グループ、「至誠園」等での取材を通じて、読者の皆さまは、「子育て支援」についても、日本社会の前進を期待できる様々な一面をご覧になったと思います。

更には安部政権の発足と同時に、少子高齢化と労働人口の減少が、日本を先進国の範疇から振り落とされるという恐れが、現実の政策論に組み入れられつつあります。

40万人にも上る潜在待機児童を対象とした国家財政援助政策や、それに加えて自治体への企業法人参入の推進指示を含む、具体的解消策が(未だ実行に移されていない分野が多すぎるきらいはありますが)、論じられようとしています。

この現状を確実に且つ急速に日本社会で現実化するには、国民のより強い後押しと情熱こそが欠かせません。


直さん一家取材の動機と理由
 今回の取材掲載の大きな理由は、本文でも述べたごとく、直さん一家との出会いによって、そのデンマークにおける子育て状況を知ることが、日本が直面する子育て支援のあり方を解決する具体例としての“きっかけ”となるのではないかと感じたからであります。

 日本の子育てが何度も行き詰まってきました。
  保育所不足で潜在待機児童数が40万人と非常に多いことが最重要課題だと考えます。
その原因を要約すると下記の三つになります。

(1) 通園費用がリーズナブルな認定保育所の経営権が厳しく制限され、
    一般民営企業の参入を認めない地方自治体が、つい最近まで一般的であった。
(2) 保育士資格者は驚くほど多数いるが、労働条件がわるい。
    特に賃金と労働時間に対する条件が他の職業に比べると、大きく及ばず且つ悪いため、
    保育士不足が現実である。
(3) コミュニティ及び父親の協力が先進諸国と比べて大変弱い

 直さんと夫のカールさん、そして生まれたばかりのカイ君と日本橋の竹内家で初めて会って以来、もう早くも3年になりますが、幸いにも毎年会うチャンスがありました。

そのチャンスとは、カイ君の祖父母、イコール直の両親や、その弟の清水敦夫妻
そして“いとこ関係”にある筆者夫婦が加わった、ワイワイとにぎやかな、ある種の定期的な家族パーティーで、直さん夫婦とカイ君のやり取りを観ていて、幸福そうな、そして睦まじい雰囲気が、筆者である私の心をとらえ感動させました。

直感: “純米家族の子育て” 「デンマークでの嬉しい子育て」です。

彼たちから、率直、且つ具体的な質問に対して回答をもらえれば、きっと今回取材の命題になった「デンマークでの嬉しい子育て」の具体的例をつぶさに取材することができ、日本の子育ての問題に対する回答が、政府や地方自治体で現在進めようとしている政策的努力への理解をも含めて、更に進んだ子育て環境の改善の参考になる具体像を、読者の皆様にお伝えできると考えました。

このことを象徴的に現わした例を、《質問-8》の《お答え》に掲載しました

「子育てに関して言えば、男性は女性と同様に関わるのが当たり前です。」
「子どもの送り迎えも交互にしている人が多いようですし、保護者会などでも男性女性と半々です。」
「母親の産休が終わった後、父親が産休をとる、ということもしばしば聞きます。」
「私が思うところ、日本と比べて仕事の融通がつきやすいのだと思います。」
「週37時間労働で、年に5週間の休暇が取れるなど、仕事と家庭のバランスをとるのが当たり前、という感覚があるようです。」


驚きの新発見と今回取材の意味

 今まで述べてきた発想により、直さんに“12”の質問をぶつけ、読者のみなさんのご理解を一層具体的に頂くために、その背景となる取材対象者直さん一家三人の略歴その他情報を《特注―α 》という形で本文中に掲載しました。
 
しかしこの段階で実にビックリ!ドッキリ!した事実を発見しました。

表紙

それは上に掲載した大月書店刊行、澤渡夏代プラント著“デンマーク子育・人育ち”という著作が2005年に刊行されていることを、インターネット上及びamazon のアドレスにアクセスして、取材後に知ったことです。
その内容を読むと、サブタイトルに記された「人が資源の福祉社会」というデンマークのコミュニティ思想の裏打ちが、子育て環境の改善を通じて、如何に国民の一人一人に浸透しつつあるかを深く理解することができます。

しかしここで読者のみなさんに申し上げたいのは、この様な著作例があることを知らず、今回の取材を遂行しましたが、直さんから得られた具体的な回答が、この著作が意図したことの、身近な具体的実態例でもあることが証明されました。

そしてこの取材が直さんに接して強く感じた“純米家族の子育て”即ち「デンマークでの嬉しい子育て」の具体的な提示を可能にしたことで、きっと読者の皆さまに、より現実的な実感として受け止めていただけると確信いたします。

直さん、ご協力ありがとうございました。
遅ればせながら、これが取材者である私が、今表現できる唯一の感謝の気持ちです。

世の進歩は国や地方行政だけによっては達成できません。
国を構成する国民一人一人の努力と進歩こそが、よりよい国や社会を作り出す原動力です。
取材者も喜寿を迎えて、お役に立ち損ねる部分があると懸念しつつありますが、読者の皆様と共に、新たな良い社会づくりへの努力を続けたいと考えます。

皆さまのご講読に感謝するとともに、読後のご意見をお寄せくだされば幸甚です。

平成26年5月         
NPOキッズエクスプレス  
理事  荘司忠男